大神ゼウスは、海辺で侍女たちと遊んでいた娘ユーロップ(エウロペ)に恋をした。ゼウスは白い牡牛に姿を変えるとユーロップのそばへ行き横たわった。穏やかな牡牛の様子にひかれたユーロップはその背に乗ってしまい、ゼウスはそのまま海を渡りクレタ島へと彼女を連れさった。ヨ-ロッパ大陸に名前をとどめるギリシア神話のエウロペの物語りである。茜(あかね)色の背景が神牛の美しさを際立たせ、遠くを見つめるユーロップの目が、絵を見るものの視線をひきつける。後ろの糸杉と思われる木は、欧州を象徴しているのであろうか。山口は初期の頃の
[フォーヴ]ィスムの影響や、単純化した表現を消化した上で、叙情的な作品に仕上げている。