緑の葉を一杯に蓄えた樹々の中、一人の女性がさっそうと馬に乗っている。一見、何の変哲もない光景に見えるが、この作品の前に立ったとき、私たちはすでにマグリットによって巧妙に仕掛けられた不思議な世界に引き込まれている。よく見ると、馬は樹木の背景にあると同時に、その手前に存在している。また、女性は、樹木の表面に描かれているようにも見えてくる。私たちは、この森の中に、現実と幻想が一緒に存在する不思議な世界をのぞき見るのである。
マグリットは、現実の世界を素材として、現実の経験にとらわれない全く新しいイメージを表す独自の世界を構築した。