柔らかく匂いたつようなあでやかさである。元禄年間は、江戸時代も中期に入り日本独特の文化がほぼ完成に近づいた時期である。経済力を持った町人たちは、自由で贅沢な雰囲気を好んだ。染色の技術も発達し、元禄のころには様々な模様の着物が作られるようになっていた。この絵もそのような元禄のころの女性たちの様子を描き出そうとしている。右側の女性は既婚者であろうか、帯を前で結んでいる。表情も落ち着いて浅葱(あさぎ)色の着物が粋である。左側の女性はあわい桜色の着物に、鹿の子絞りの渋い茄子紺(なすこん)色の帯がかえって若々しい。桜の花の下の若い娘はやがて緑茂るような女ざかりの女性へと変わっていくのであろう。