気ままな線が折れ曲がりカーブして、丸や三角、細長いかたち、長ぐつのようなかたちが生まれる。線は自由に楽しげに、心地よいリズムをつくりあげている。「芸術は目に見えるものを再現するのではなくて、目に見えるようにすることである」と
クレーは言った。イメージをあらかじめ定めず、線そのものに行き先をまかせるような描き方は、見えない何かを「目に見えるようにする」一つの方法なのだろう。
クレーの晩年は病との闘いの日々でもあったが、「線を引かぬ日はなし」をモットーに制作を続けた。この作品を描いた1940年に
クレーは世を去ったが、この年だけでも366点の作品を残している。