この作品は、
[シニャック]とともにサン・トロペに滞在した時期に描かれたものである。サン・トロペの地中海沿岸地方の明るい光と色彩は、
[ボナール]に強い印象を与え、この時のことを「私は『千一夜物語』のような衝撃を受けた。海や黄色い壁、光と同じように多彩な反映(略)」と後に語っている。色彩画家としての自覚をさらに強めた時期であった。中心に描かれている人物は、マルト夫人であり、
[ボナール]の作品によく登場している。逆光の人物と明るい背景からは、色彩と装飾性を追求する
[ボナール]の姿勢が伝わる。