ベニヤ板を3枚はり合わせた大画面に、奇妙な空想の一場面が繰り広げられている。縦横無尽に組まれた足場が奥までずっと続き、顔も体も派手な縞(しま)でおおわれた男たちがよじ登ってきている。一番手前には黄と黒の縞の巨大な動物が、この空間の支配者であるかのように悠々と歩いている。
[靉嘔]というと虹の画家として知られているが、これは虹色を使い始める前の昭和32年の作品である。この年は
[デモクラート美術家協会]が解散した年で、
[靉嘔]は翌33年の5月にニューヨークへ旅立つ。自らの手で新しい時代の幕を上げようという、肯定的で前向きな決意が画面にみなぎっているように感じられる。