内藤家旧蔵の能面には、桃山時代末期から江戸時代初期にかけて豊臣秀吉や朝廷から「天下一」の称号を受けた面打ちの作品が30点含まれている。
さらに、桃山時代から江戸時代初期の作と考えられる無銘の小面(こおもて)や、面裏に五代将軍綱吉に能を指南したとされる喜多流三代「宗能(むねよし)」の花押のある「中尉(ちゅうじょう)・怪士(あやかし)・小面・平太(へいだ)」の4つの能面、県(あがた)土持氏の時代、宇佐八幡宮から授かったとされる室町時代末期の「白式尉(はくしきじょう)・黒式尉(こくしきじょう)」など由緒ある優れた能面が揃っている。また、主に江戸時代中期の作品である狂言面も含まれている。
このように、大名家の能狂言面がまとまって残されている例は少ない。中でも「天下一」の焼き印がある能面が30点も含まれていることは、特筆に価する。また、これらの能狂言面は歴史的資料としてばかりでなく美術品としても価値の高い重要なものである。