Photo by Kaz Kuroki
地下式横穴墓の副葬品
~人骨からわかる親族関係~
Grave goods from underground tunnel tombs: Insights into familial relations gleaned from human bones
西都原4号地下式横穴墓出土鉄製短甲
北部九州などの横穴墓が家長の死をもって造墓が開始され、配偶者を含まないことは共通しているが、地下式横穴墓には女性や時には小児が初葬される例が多く見られ、その様相は7世紀代、古墳時代の終焉まで継続する。
そこからは、「キョウダイ原理」による埋葬と、母系制と父系制の双方の原理による「双系性」の親族構造が理解され、人類史上における双系制の実態を知る上で重要な墓制と言える。
地下式横穴墓の副葬品の保有状態には顕著な特徴と集中が見られるものの、構造・規模は均一的である。
西都原4号地下式横穴墓出土品
女性への武器副葬は多く見られ、地下式横穴墓社会では普遍的である。双系制の社会では、財産権が母系によっても相続・継承される。
地下式横穴墓は、多くの資料をわれわれに与えてきており、そこには畿内王権及び朝鮮半島との関係を有し、前方後円墳級に相当する在地の被葬者像は、確かなものであった。
地下式横穴墓の玄室規模は、決して突出した大きさを持つものではなく、玄室規模に階層としての価値観は置かない。
前方後円墳の副葬品にも匹敵する多種・多量の副葬品を所有する首長の性格は存在するが、下部を構成する集団の階層性がより重層的に構成される社会ではなかった。