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交差する歴史と神話みやざき発掘100年

世界文化遺産の登録基準
「顕著な普遍的価値」と「真正性と完全性」
World Heritage · Japan's World Heritage

「西都原古墳群をはじめとする南九州の古墳文化」のコンセプト

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    畿内王権と連合の中で列島弧に共有して築造される前方後円墳と、南九州独特の墓制である地下式横穴墓・板石積石室墓が共存する。

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    朝鮮半島から横穴式石室の導入は、革新的な在地墓制の地下式横穴墓の成立をもたらし、次いで北部九州での横穴墓の成立を促し、朝鮮半島と列島弧の政治的・軍事的関係の中で、「逆輸出」として朝鮮半島西南部での地下式横穴墓(横穴墓)の築造へとつながる。

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    また列島弧固有の墳形である前方後円墳の半島西南部での成立にも、南九州の勢力が加わった可能性がある。

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    列島弧及び東アジアにおける墓制の普遍性と固有性を最も典型的な形として示す希有な存在である。

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    九州島の巨大古墳上位12基のうち8基を西都原古墳群の男狭穂塚・女狭穂塚(陵墓参考地)をはじめとする南九州(大隅を含む)の古墳が占める(福岡県2基・大分県2基)。

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    生目古墳群(4世紀)、西都原古墳群(5世紀)、新田原古墳群(6世紀)と持田古墳群(4~6世紀)は、優れた歴史的・文化的景観を保持し、現在に継承されている。

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    『古事記』『日本書紀』に記された4世紀(景行天皇)から5世紀(雄略天皇)までの日向出身女性との継続的・密接な婚姻関係は、巨大古墳築造の背景として考えられる。

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    婚姻関係の成立の要因には、南九州の豪族(諸県君)の持った軍事力及び海上交通の権益があった。

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    日本神話・建国神話の舞台に築造された古墳群として、畿内王権の形成過程を示す百舌鳥・古市古墳群と併せて評価することが出来る。

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    照葉樹林(中国大陸江南との関係)の育んだ豊かな自然環境は、列島弧の中でいち早く成熟した縄文文化を生み出し、列島弧への稲作の受け入れ(大陸江南から朝鮮半島経由)に際しても大きな窓口となるなど、南九州の位置づけが独特の古墳文化を開花させる基盤となった。

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    活発な火山活動は、各時代時代に大きな影響をもたらしながら、火山灰台地(霧島連山、姶良カルデラ・桜島などを起源とする)の卓越する地勢が、独特の在地墓制としての地下式横穴墓を誕生させる基盤となった。

4号地下式

西都原4号地下式横穴墓

生目古墳

生目5号墳

評価基準

 世界遺産一覧表に文化遺産を登録する場合、世界遺産委員会は、当該資産が「顕著な普遍的価値」を有するものとみなすために、資産が世界遺産委員会の定める「世界遺産条約履行のための作業指針」に規定されている評価基準を1つ以上満たす必要がある。
 評価基準は、(ⅰ)~(ⅹ)の10項目のうち、南九州の古墳文化は(ⅱ)・(ⅲ)・(ⅳ)・(ⅴ)・(ⅵ)の5項目が該当すると考えている。

【世界遺産一覧表に文化資産を登録する場合の評価基準】

「世界文化遺産特別委員会における調査・審議の結果について」
文化庁文化審議会 文化財分科会
世界文化遺産特別委員会(平成19年)より

  1. (ⅰ) 人間の創造的才能を表す傑作である。
  2. (ⅱ) 建築,科学技術,記念碑,都市計画,景観設計の発展に重要な影響を与えた,ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  3. (ⅲ) 現存するか消滅しているかにかかわらず,ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
  4. (ⅳ) 歴史上の重要な段階を物語る建築物,その集合体,科学技術の集合体,或いは景観を代表する顕著な見本である。
  5. (ⅴ) あるひとつの文化(又は複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は,人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
  6. (ⅵ) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
  7. (ⅶ) 最上級の自然現象,又は,類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
  8. (ⅷ) 生命進化の記録や,地形形成における重要な進行中の地質学的過程,あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった,地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
  9. (ⅸ) 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群衆の進化,発展において,重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
  10. (ⅹ) 学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など,生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

完全性・真正性

 また、世界遺産委員会の定める「世界遺産条約履行のための作業指針」においては、顕著な普遍的価値を有するとみなされた場合、当該資産が完全性及び又は真実性の条件についても満たしている必要があるとしている。

「西都原古墳群をはじめとする南九州の古墳文化」における「完全性」と「真正性」について

完全性
integrity
保全の状況や必要な要素が完全な状態を保っていること
  • 『記・紀』の記述は、古墳群の存在を支持するものとなっている。
  • 古墳群の築造時期は、列島弧における古墳時代全期(3世紀後半から7世紀前半)に及び、日本史そのものを具現するものである。
  • ほとんどの古墳の保存状態は完全で、また周辺景観も著しい開発等を受けることなく、歴史的・文化的景観を保持している。
  • 古墳の形態・規模等について、顕著な普遍的価値を証明することが出来る。
真正性
authenticity
構成する材料等や文化的特徴が本物(オリジナル)であること
  • 古墳を構成する要素(形状・意匠・材料・材質)や機能・位置などすべてにオリジナルな要素によって構成されている。
  • 考古学的調査・研究及び文献史料、また伝承等(神話・神楽・民俗芸能)を含め、その真正性の条件を満たしている。

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